


はじめまして。児童局のAといいます。
10年前まで、はやみねかおる先生の
「名探偵夢水清志郎」シリーズや
松原秀行先生の「パスワード」シリーズを
担当させていただきました。
両先生を担当させていただいて、大変幸せでしたし、
当時はお酒ばかり飲んでいて、
いまとなっては楽しい思い出ばかりです。
現在は、青い鳥文庫の隣の児童図書第一出版部で、
書類のハンコ押しばかりしています。
僕が紹介したい読みものは、富山和子先生が著した
『川は生きている』というノンフィクションの本です。
いま、青い鳥文庫にもおさめられておりますが、
最初はいまから32年も前の1978年(昭和53年)に
ハードカバーで刊行されました。
このハードカバーの本は、いまでも
書店で買うことができます。
そのころは、エコロジーとか地球環境などと、
まだ世間やマスコミであまりとりざたされていない
時代でした。
しかし、この本で川への関心が高まり、川をきれいに
する運動もじょじょにさかんになっていきます。
そして著者の富山先生は、川、すなわち水の原点は
土にあり、その土を形成する唯一のものが
森であると展開しています。
つづいて富山先生は、自然の循環・連関性を説くために、
続刊の『道は生きている』、『森は生きている』、
さらには『お米は生きている』を刊行して行きます。
そしてついに、2009年9月に『海は生きている』を刊行して、
「生きているシリーズ5部作」を完結されました。
なんと、『川は生きている』が刊行されてから、
31年もの年月がついやされたのです。
『川は生きている』の中で興味深い点は、
戦国武将の武田信玄や加藤清正が
支配下の土地や人民の生活を守るために、
堤防をきずくことに力をそそいだことです。
信玄がきずいた堤(つつみ)は「信玄堤」と命名され、
いまもその一部が残っているそうです。
徳川家康も、利根川の水が氾濫(はんらん)しないように
治水(ちすい)工事を行ったという記述が見られます。
この作品を読むことで、川が人々の生活にいかに重要か、
そして、川は、道、森、お米、海、各々と
どれほど深い関係にあるかが、
きわめてわかりやすく書かれています。
10数年前にわたしが児童局所属になって
初めて読んだ本ですが、
著者の先を見通す能力には
感心したものです。