
◆山はどうしてできるのか
さて、五時間目には地理を勉強することにしよう。地理といったってものすごく幅が広くて何をやるんだかわからない、と思うかもね。なるべくならば、地理の考え方がわかる授業にしたいんだけど。
そこで、みんなで山のことを考えてみたいんだ。あの、誰でもよく知っている山だ。富士山とか、エベレスト山とかの山。もっと低い山でもいいけど、とにかく山登りをする人もいるという山のことだよ。

山ってなんだ、というのはわかるね。山は、地面のうず高く感り上がっているところ、だよ。そこで今から考えてみたいのは、 山はどうしてできるんだろう、ということと、 山があるとどうなるんだろう、という二つのことだ。
それで、山はどうしてできるのか、というのは、どちらかというと理科で考えることなんだけどね。でもいいじゃない、理科と社会科は親戚みたいなところもあるんだから。
山はどうしてできるんだろう。さあ、わからないかな。実は山ができる原因については今現在も地質学者によっていろいろな仮説が出されているところで、決定的にこれが原因だと解明されているわけじゃあないんだ。
でも、これは社会科の授業なんだから、だいたいこんなことじゃないかな、という、今最も本当っぽい説でいいことにしよう。
そうすると、山ができる原因は大きく二つあるんだけど、誰か、ひとつでもわかる人はいないかな。平らな地面にどうして山ができるかだ。海野さんは意見があるんだね。答えてみて。
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山ができるのは、火山活動のせいだと思います。火山が噴火して、溶岩(ようがん)が出て固まって山になるんだから。
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すばらしいね。それは正解だ。
火山活動、つまり火山が噴火して山ができるんだ。地球の内部にあるマグマが、ある時地表にモコモコと出てくるのが火山活動だね。硬(かた)いマグマがモコモコと出てくることもあるし、爆発があって火山岩がふき飛ばされることもある。それから、軟(やわ)らかいマグマがドロドロと流れ出すこともある。
いずれにしても、地下からマグマが地表に出てきて、それが積もるから山になるんだね。日本は火山の多い国で、火山活動でできた山はめずらしくないよ。ここしばらくは噴火していないけど、日本でいちばん高い富士山も火山だってことはみんなも知っているだろう。
さて、ではもうひとつの山ができる原因はなんだろう。これはちょっと意外なので、思いつかないかもしれないな。えーとね、非常に単純にいってしまうとこうなんだ。 地面が横から強く押されると、ぐにゃりと曲がって上に持ちあがって高くなる、ということだよ。たとえば、座布団の両はしを持って中央のほうへぎゅっと押せば、真ん中のところが曲がって上に持ちあがるじゃない。ああいうふうに、地面が押されれば持ちあがって山になるんだよ。

地面は何層にも重なった地層でできていて、それがぐにゃりと曲がることを褶曲(しゅうきょく)というんだ。理科の授業じゃないんだから、そのことばを覚えなくてもいいけど。
ただ、横から圧力をかけられると地面が盛りあがって山になるんだ、というのだけを頭に入れよう。でもって、考えなきゃいけないのは、 どうして横から圧力がかかるのか、だ。何が地面を押すかか、ってことだね。
その話も理科だから、ここでは簡単に触れるだけにしておこう。地球の地面はね、ものすごくゆっくりとだけれど、実は動いているんだ。地球の表面は何枚かのプレート、つまり地面のパンケーキみたいなものからなっていて、それが何百万年、何千万年という単位で見ないとわからないんだけど、動いている。あるところでは二つのプレートがぶつかりあっていたり、あるところでは、一枚のプレートが別のプレートの下へもぐりこんでいたりするんだよ。
そういうわけで、アジア大陸とか、アフリカ大陸とかいう大陸も、すごくゆっくりとだけど動いているんだ。
そのことをわかってもらったうえで、こういう話をしよう。南アジアに インドがあるね。三角形のインド半島がインド洋に突き出しているように見えるよね。  ところがあのインド半島は、一億年ほど前には アフリカ大陸にくっついていたんだよ。それがプレートが動くせいでアフリカ大陸から離れて、何千万年もかけてインド洋を北に動いて、ついにアジア大陸にくっついたんだ。そして、その 動きのエネルギーで、アジア大陸をぐいぐいと北に押した。
押された地面は上へ高く盛りあがった。そうしてできたのが、 ヒマラヤ山脈なんだよ。つまり、そこにある エベレスト山も、インドに押しまくられたせいで山になったというわけなんだ。
ついでに、もうひとつ横から押しまくられたせいで山ができた話をしよう。さっき、山ができる原因には火山活動がある、といって、富士山もそのようにできた火山だといったよね。しかし、火山ってどうしてあるんだろう、というのを考えてみたいんだ。火山というのは、世界中にまんべんなく散らばっているんじゃなくて、やけに火山の密集しているところがあるんだよ。日本はまさにそのような火山の密集している国だ。
そのように、火山が密集しているところは実は、プレートがぶつかりあっているところなんだ。つまり、火山活動がおこる原因も、もとをたどれば地面の押しあいなんだね。
そこで、日本の 静岡県を見てほしいんだけど、そこには 伊豆半島というまずまず大きな半島があるね。  そこで、ちょっと意外な話だけど、伊豆半島は大昔には、日本から離れて太平洋上にあった島だったんだよ。その島がプレートの動きのせいで百万年ぐらい前に日本にぶつかって半島になったんだ。そして、日本をぐいぐい北へ押した。
その 圧力のせいで火山活動が盛んになり、数十万年前に富士山のもとになる山が噴火して盛りあがったんだ。そして、八万年前にも噴火があってさらに高くなり、それからしばらくは静かだったけど、五千年前にまた噴火して高くなった。だいたいそれが、今の富士山になっているんだ。
どうも、山というものは 横から押されてできるものなんだね。
◆山があるせいで気候ができる
では次に、山があるとどういうことがおこるかを考えてみよう。さて、山があるとその近くはどういうことになっちゃうだろうか。
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山があったら交通のじゃまになるじゃん。
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山田くんの言うのもひとつの事実だよ。間に山があったら、隣の村にだって簡単には行けないものね。
でも、そんなことよりもっと大きなことが山があるせいでおこるんだ。それは、山があると風がぶつかる、ということだ。
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ヘンなの。山に風がぶつかったって、なんにも困ったことじゃないじゃん。
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いや、そうではないんだよ、山田くん。山に風がぶつかるのはとても重大な意味を持つことなんだ。その理由はこうだ。
山に風、つまり空気の流れだけど、それがぶつかれば当然、空気は上へ行くしかないよね。そして空気が上へ行く、つまり上昇すると、温度が下がるんだよ。それは、なんとなくわかるだろう。高い山の上へ行くと涼しいものね。だいたい、空気は百メートル上昇すると気温で摂氏(せっし)一度下がるんだ。
山があるせいで上昇した空気は温度が下がる。すると、空気の中には水蒸気が含まれて少し湿り気があるんだけど、その水蒸気が冷やされて、気体でいることができなくなって液体になる。と言うとむずかしいようだけど、水になるってことだね。つまり、雨になるわけだ。風が山にぶつかって上昇すると雨がふるってこと。高い山の場合はもっと冷えて雪になるわけだ。
もちろん、平野にだって雨がふったり雪がふったりすることはあるけど、山には物理的に雨や雪が多いんだ。このことはとても重要なんだよ。
さて、そのあとを考えてみよう。雨や雪をふらせた空気が、ついに山の頂上を通過すると、今度は下降していくよね。その空気は下がっていくにつれて温度が高くなるんだけど、もう雨をふらせてしまったあとだから水蒸気をあまり含んでいなくて、乾燥した風になるよね。
日本の冬のことを考えてみよう。冬には日本には北風が吹くよね。つまり、アジア大陸のロシアのほうから冷たい風が吹いてくるってこと。その風が、日本海の上を通ってくるうちに水蒸気を含んで湿った風になる。そして、日本まで来て日本海側の山にぶつかるわけだよ。だからそこにどっと雪をふらせる。日本の日本海側というのは、世界三大豪雪地帯の中に入っているほど、世界でもめずらしく雪の多いところなんだよ。
そして、雪をふらせてしまった乾いた風が太平洋側へ吹きつけるんだね。たとえば関東平野に吹きつける「からっ風」というのがそれだよ。
わかってこないかい。山があると、 雨がよくふったり、 雪がよくふったり、反対に、すごく 乾いた風が吹いたり、 温度の高い風が吹いたりするんだ。地形によってその様子は少しずつ変ってくるけど、とにかく、山があることでその地方の気候が左右されているんだよ。

たとえば、エベレスト山のあるヒマラヤ山脈だよ。あのあたりにはほかにも高い山脈があって、 世界の屋根と言われている。そして、その世界の屋根の南側は、 雨がめちゃめちゃふるところで、 密林が広がり、大きな 川が流れている。ところが世界の屋根の北側は、 タクラマカン砂漠とか、 ゴビ砂漠というのがあって、乾燥しきって植物の生えない砂漠地帯なんだ。あまりにも高い山があるせいで、そんなふうな気候になっているんだね。
おもしろいことだと思わないかい。山があるせいで、世界各地のいろんな気候が生まれているんだよ。もちろん、世界の気候のちがいは山のせいであるだけじゃなくて、ほかのことも気候の要因ではあるんだけど、山が気候に大きく関係しているっていうのは確かな事実なんだ。
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